ペロブスカイト太陽電池関連銘柄:エネルギーの未来を変える国内企業

カーボンニュートラル社会の実現に向け、再生可能エネルギーの導入が世界的な潮流となる中、太陽光発電の分野で大きな技術革新が起きています。
その主役が、次世代太陽電池の本命と目される「ペロブスカイト太陽電池」です。
軽量で折り曲げも可能なこの太陽電池は、従来のシリコン系では設置が難しかったビルの壁面や曲面、耐荷重の低い屋根など、都市のあらゆる場所を発電所に変えるポテンシャルを秘めています。
2025年頃の社会実装を目指し、国内では実証実験が活発化。
総合電機メーカーから化学、電子部品メーカーに至るまで、多様な企業が市場に参入しています。
ガラスと一体化させる技術、フィルムのように薄く加工する技術、そして量産を支える製造技術や部材開発など、各社は独自の強みを活かしてサプライチェーンの構築を競っています。
本記事では、この黎明期にあるペロブスカイト太陽電池市場において、それぞれ異なるアプローチで未来を切り拓こうとする6社の戦略と展望を解説します。
finboard
1935年設立のパナソニック ホールディングス株式会社は、総合エレクトロニクスメーカーとして国内外に事業を展開しています。
その事業は「くらし事業」や「エナジー」など5つのセグメントから成り、家電からBtoBソリューションまでグローバルに展開しています。
次世代太陽電池として期待されるペロブスカイト分野で、同社は「発電するガラス」というコンセプトを掲げています。
世界で初めてガラス建材一体型のプロトタイプを開発し、2023年8月からFujisawaサスティナブル・スマートタウンで長期実証実験を開始しました。
実用サイズのモジュールとして世界最高レベルの発電効率17.9%を達成しています。
この技術の核心は、独自のインクジェット塗布製法とレーザー加工技術にあり、サイズやデザインの自由度を高めています。
これにより、従来の結晶シリコン系太陽電池では設置が難しかったビルの窓や壁面への展開が可能となります。
地産地消の観点では、災害時などの電力供給システムの強靭化への貢献も期待されています。
将来的には、エネルギー問題と都市景観を両立するソリューションとして建築市場に新たな価値を提供し、技術的リーダーシップを確立する可能性があります。
しかし、事業化に向けては、長期実証実験を通じて発電性能や耐久性等の確認を進める必要があります。
また、再生可能エネルギーに関する法規制や補助金の変更、原材料価格の高騰といったリスクも存在します。
>>パナソニックホールディングスについてもっと詳しく:「創業者の意志、現代に取り戻す」パナソニック流デザイン経営
finboard
積水化学工業株式会社は、住宅、環境・ライフライン、高機能プラスチックス、メディカルの4領域を柱とし、社会インフラから最先端の電子材料まで幅広く手がけています。
同社は長期ビジョン「Vision 2030」を掲げ、サステナブルな社会の実現に向けたイノベーション創出を経営の中核に据えています。
次世代太陽電池として注目されるペロブスカイト分野において、同社は「軽量・柔軟」という特性を最大限に活かしたフィルム型太陽電池の開発で市場をリードしています。
この技術は、シリコン系では設置が困難だった建物の壁面や曲面、耐荷重の低い屋根など、設置場所の制約を打破する可能性を秘めています。
独自の封止技術や、将来の量産化を見据えたRoll-to-Roll製造技術の開発が、同社の競争優位性の源泉となっています。
同社は2025年の事業化を目標に掲げ、社会実装に向けた動きを加速させています。
すでに屋外耐久性10年相当を確認し、発電効率も高い水準を達成しています。JR西日本やNTTデータ、東京都など多様なパートナーと連携し、駅やビル壁、インフラ施設での実証実験を積極的に推進することで、技術的な課題解決と実用化に向けたノウハウの蓄積を同時に進めている点が特徴です。
一方で、フィルム型太陽電池の事業化には1m幅での製造技術確立や、さらなる耐久性の向上が不可欠であると認識されています。
また、海外での実証実験においては法規制に関する課題検討も行われており、各種規制への対応も重要となるでしょう。
finboard
1912年に創業したシャープ株式会社は、家電製品などを手がける「ブランド事業」と、ディスプレイや電子部品を供給する「デバイス事業」をグローバルに展開する総合電機メーカーです。
長期環境ビジョン「SHARP Eco Vision 2050」を掲げ、カーボンニュートラルへの貢献を重要課題の一つとしています。
次世代太陽電池として期待されるペロブスカイト分野において、同社は自社で事業を主導するというより、他社の事業化を支える重要なパートナーとしての役割を担っています。
半世紀以上にわたる太陽電池の研究開発で培った高い技術力と、大規模な生産拠点を活用し、日本の次世代エネルギー産業のサプライチェーン構築に関与しています。
具体的な施策として、積水化学工業が進めるフィルム型ペロブスカイト太陽電池の量産化プロジェクトに対し、堺工場の一部を製造拠点として提供することを決定しました。
これは、同社が持つ生産インフラやノウハウが、新たな市場の創出において重要な役割を果たすことを示すものです。
この連携は、GXサプライチェーン構築支援事業の一環としても位置づけられています。
同社にとってこの連携は、遊休資産の有効活用と将来市場への足がかりとなる一方、事業の主導権はパートナー企業にあります。
また、会社全体としては、デバイス事業の構造改革が最優先課題であり、その進捗が新規分野への投資余力に影響を及ぼす可能性も考慮すべきでしょう。
finboard
ホシデンは1947年に創業した電子部品メーカーです 。
コネクタやスイッチといった機構部品を主力事業としながら 、薄型・軽量で柔軟性が求められる最先端デバイス向けの技術開発にも注力しています。
その取り組みの一つが、次世代エネルギーとして期待されるペロブスカイト太陽電池の分野で、市場から大きな注目を集めています。
同社は現在、ペロブスカイト太陽電池の量産化に向けた原理試作の提供や開発を進めています。
同社はディスプレイやタッチパネルを手掛けてきました。
これは太陽光発電と同じ光電変換素子であり、原理や構造が類似しています。そのため、これらの事業で培った技術や開発経験を、ペロブスカイト太陽電池に応用できると考えられています。
この応用技術の背景には、同社が長年培ってきた信頼性の高い製品開発力があります。
例えば、自動車向け製品で要求される高い耐久性やEMC対策技術 は、屋外の過酷な環境で使用される太陽電池においても大きな強みとなります。
今後、ペロブスカイト太陽電池の市場が本格的に立ち上がれば、同社は新規事業として参入し量産化を目指していることから、供給者として一定の役割を担うことが考えられます。
一方、同社グループの事業運営上のリスクとして、世界的な価格競争や原材料価格の変動といった外部環境の変化、技術革新や市場価格の変化、電子機器関連技術の急激な変化など が挙げられます。
finboard
倉元製作所は1975年に設立され、液晶パネル向けのガラス基板加工を主力事業としてきました。
しかし、事業環境の変化に対応するため、2024年8月に次世代エネルギーとして注目されるペロブスカイト太陽電池事業への新規参入を決定しました。
同社は抜本的な収益構造の変革が急務であると認識しており、事業成長を図るための一層のスピードと規模感を重視しています。
研究開発や試作段階に留まるのではなく、すでに確立された生産技術を持つ中国の先端企業と連携し、量産化設備を迅速に導入する計画です。
これにより、「日本ブランド・日本製造」の製品を早期に市場投入することを目指しており、自社技術のみに固執する他社との差別化を図っています。
この戦略を技術面で支えるのが、国内の大学研究機関との連携です。
2024年6月には、この分野で日本を代表する大学教授と技術顧問契約を締結し、変換効率や量産技術における競争優位性の確保に努めています。
既存のインフラ設備を活用しつつ、ガラス型とフィルム型双方に対応する量産プラントの建設に向けた設備投資を行うことで、事業化を加速させています。
一方で、同社は現在、経営再建の途上にあることも事実であり、新規事業を推進するための財務基盤が盤石とは言えません。
ペロブスカイト太陽電池事業では、資材調達や工事の遅れによる事業開始の遅延、また国内外の競合との競争激化による販売価格の急落が、運営上の課題として挙げられます。
finboard
フジプレアムは、1982年に設立された技術開発型企業です。
同社の強みは、創業以来培ってきた独自の「精密貼合技術」にあります。
事業は、車載ディスプレイ部材などを扱う精密貼合・高機能複合材部門と、太陽電池やメカトロニクス設備を手掛ける環境住空間・エンジニアリング部門の二本柱で構成されています。
近年、同社は次世代エネルギーとして注目されるペロブスカイト太陽電池の社会実装に注力しています。
この太陽電池は軽量で柔軟な上、太陽光だけでなく室内照明からも発電できるという特性を持ちます。
具体的な取り組みとして、開発をリードするポーランドのサウレ・テクノロジーズ社と連携 。
2025年の大阪・関西万博では、円筒形状のスマートポールに適合させた曲面フィルム型太陽電池を実装しています。
このプロジェクトにおける同社の競争優位性は、長年の実績に裏打ちされた精密貼合技術を応用した、独自の封止技術を提供できる点にあります。
ペロブスカイト太陽電池の実用化には耐久性の向上が不可欠ですが、同社の封止技術は、この核心的な課題を解決し、長寿命化に貢献するものと考えられます。
しかしながら、事業運営にはリスクも存在します。
既存の太陽電池市場では海外メーカーとの厳しい競争が続いており、主力の車載関連事業も国内自動車メーカーの生産計画見直しに左右される状況です。
さらに、産業機器市場における中国市場の景気減速も懸念材料となっています。