アドテク関連銘柄:AIとデータ戦略に見る各社の動向と課題

近年、アドテクノロジー市場は、AIとデータ戦略を核とした急速な変革期を迎えています。
インターネット広告費の持続的な拡大を背景に、企業はより精緻で効果的な広告配信を追求。
その中で、生成AIによるクリエイティブ制作の効率化や、大規模言語モデルを活用したコミュニケーション最適化など、AI技術の導入が不可欠な要素となりつつあります。
本記事では、こうした市場動向の中で独自の戦略を掲げ、アドテク市場の未来を切り拓こうとする主要企業の動向と、直面する課題について深掘りしていきます。
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株式会社サイバーエージェントは、1998年に設立されたインターネット総合サービス企業です。
メディア&IP事業やゲーム事業と並び、インターネット広告事業を主要な事業の一つとして展開しています。
同社は特にAI技術の活用に注力し、生成AIの導入を通じてインターネット広告事業を含む多岐にわたる領域で業務効率の改善や事業運営の高度化を図っています。
2016年には、幅広いAI技術の研究開発を目的とした「AI Lab」を設立し、最先端の研究開発を推進。
その成果は、インターネット広告事業におけるAI活用による広告制作プロセスの効率化などに繋がっているとされます。
さらに、独自開発した日本語LLMを一般公開するなど、研究成果の社会還元にも積極的です。
同社グループの特徴として、先端技術を応用する実装力や、高度なAI研究人材のための環境整備などが挙げられ、AI技術分野での研究開発と社会実装を推進しています。
サイバーエージェントの事業においては、AI技術の進化とその応用範囲の拡大が、今後の事業展開における注目点の一つと考えられます。
一方で、インターネット広告事業においては、OS事業者によるCookie規制といったリスク要因も存在します。
また、生成AIをはじめとするAI利用に関する規制強化のリスクに対応するため、ガイドラインの策定やガバナンス体制の強化にも努めているとのことです。
>>サイバーエージェントについてもっと詳しく:なぜサイバーエージェントとグッドパッチが組んだのか キーマンが語る“スピード提携”の舞台裏
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株式会社マイクロアドの核はデータプラットフォーム事業であり、自社開発のデータプロダクト提供と専門的なコンサルティングサービスを二つの大きな柱としています。
オンライン・オフラインを横断した消費行動データを有効に活用し、顧客に最適化されたソリューションを提供している点が特徴です。
同社の主力データプロダクト「UNIVERSE」は、多様な業種特化型マーケティングデータプラットフォームです。
様々なデータパートナーからの消費行動データをAIで分析し、広告配信から効果測定、顧客分析までを一気通貫で支援するもので、的確なターゲティングと効果の追求が可能になるとされています。
オフライン領域では約13万面のデジタルサイネージをネットワーク化した「MONOLITHS」も展開し 、オンラインと連携した広告展開を実現。
また、コンサルティングサービスでは台湾を中心とした中華圏等での実績も有し、企業のグローバルなマーケティング活動をサポート。
国内メディアの広告収益最大化も支援しています。
同社の今後の事業展開において、デジタルサイネージ市場の成長、海外事業の拡大などが注目される要素です。
また、Cookie規制等の市場変化やデータプライバシーへの対応も重要です。
一方、国内外プラットフォーマーとの競争、技術進化への追随、海外リスクなどが課題として挙げられるでしょう。
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SMN株式会社は、1998年に設立されたマーケティングテクノロジー企業です。
ソニーグループの一員として、アドテクノロジーを中核に事業展開。
DSP「Logicad」提供やマーケティングソリューション等で、企業のデジタルマーケティング課題解決を支援しています。
同社のアドテク事業の主力は、広告効果最適化プラットフォームDSP「Logicad」です。
独自のAIエンジン「VALIS-Engine」を搭載し、RTBを通じて広告配信の精度と効率を追求。
広告主にとっては、適切なオーディエンスへ最適なタイミングで広告を配信するための手段を提供するとされています。
また、デジタル広告を中心とする事業を展開する一方、プロモーション関連領域ではテレビCMデータの販売サービスを提供しています。
データサイエンスとビッグデータを活用し、クライアントの多様なニーズに対応するソリューション開発に取り組んでいる点が特徴です。
SMNは、ソニーグループとの連携強化や、人工知能を含む技術革新への対応、そして人工知能VALIS-Engine等の技術活用を通じた事業展開を進めています。一方で、主要広告プラットフォームのポリシー変更、規制強化、景気変動がリスク要因と考えられます。
さらに、事業ポートフォリオの再定義や収益構造改革を含む構造改革の推進が重要な課題として挙げられています。
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GMO TECH株式会社は、2006年設立、2009年よりGMOインターネットグループの一員となったテクノロジー企業です。
主力は集客支援事業で、運用型広告やSEO、MEO、など多岐にわたるデジタルマーケティングサービスを提供しています。
同社の集客支援の中核を成すのは、検索エンジンやマップ上における顧客の可視性を高めるSEO・MEOコンサルティングです。
「MEO Dash! byGMO」のようなローカルSEO施策や、専門的な知見に基づいたSEO戦略を提供。
多様な運用型広告にも対応し、クライアントの目的に合わせた運用代行も展開中です。
これらのサービスに加え、同社はアフィリエイト広告プラットフォーム「GMO SmaAD」も提供。
これはスマートフォンアプリやWebサービスに特化した成果報酬型の広告サービスです。
GMO SmaADは、広告主にとってはリスクを抑制したユーザー獲得の手段の一つとなり、メディアパートナーにとっては自社媒体の収益化の機会を提供するとされています。
国内インターネット広告市場が拡大傾向にある中、WebマーケティングDXサービスの提供、MEOサービスへの注力などが、同社の今後の事業展開における重要な要素と考えられます。
その一方で、主要プラットフォームの仕様変更への依存度が高く、迅速な対応が不可欠であり、市場競争や人材確保も課題として認識されています。
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株式会社Geolocation Technologyは、2000年創業のテクノロジー企業です。IP Geolocation技術を基盤としたデータベース「SURFPOINT™」を核に事業を展開。
主力はIP Geolocation事業で、データベース利用やサイト解析、広告配信等を提供しています。
同社アドテクの中核を成すのは、日々更新されるIP GeolocationデータベースSURFPOINT™です。
このデータベースは、「どこどこJP」というWebサービスを通じ利用可能で、Webサイト訪問企業の特定やエリアマーケティングの基盤情報を提供。
企業はオンラインでの顧客アプローチをより精密に行えるようになります。
SURFPOINT™のデータを活用した具体的なアドテクサービスが「どこどこad」です。
ユーザーIPアドレスから判定した位置情報や気象情報等で広告配信を最適化します。
Cookieに頼らないターゲティング手法として、ポストCookie時代の広告戦略に貢献。企業の効率的な広告運用を支援しています。
同社の将来性は、DX支援やポストCookie対応解析支援、どこどこad等のプロダクト成長に期待がかかるでしょう。
一方で、個人情報保護規制やCookie規制強化への継続的対応は不可欠です。
技術進化が速いアドテク業界での競争力維持、専門人材確保も今後の重要な課題と言えます。