働き方改革をリードするオフィス家具銘柄4選:その競争優位性と将来性とは

イトーキ

「働き方改革」やデジタルトランスフォーメーション(DX)の潮流は、オフィス家具市場に新たな成長機会をもたらしています。かつての画一的なオフィス環境は姿を変え、従業員のエンゲージメントや生産性向上を目的とした、より戦略的で柔軟なワークプレイス設計が不可欠となりました。

この変化は、オフィス家具メーカーにとって、単なる什器サプライヤーから脱却し、総合的な「ワークプレイス・ソリューションプロバイダー」へと進化する好機です。

各社はそれぞれの強みを活かし、技術革新やM&Aを通じて、付加価値の高いサービス展開を加速させています。

本稿では、こうしたダイナミックな市場環境における国内の主要なオフィス家具メーカーである、オカムラ、コクヨ、イトーキ、内田洋行を取り上げ、各社の市場での立ち位置や戦略などについて紹介します。

高品質な空間創造で市場をリード「オカムラ」

株式会社オカムラは、1946年の会社設立以来、オフィス家具業界を牽引してきたリーディングカンパニーです。主要事業はオフィス環境事業、商環境事業、物流システム事業の三本柱で構成されています。

オカムラは家具を製造・販売するだけでなく、空間全体のデザインや構築、コンサルティングまでを手掛けており、総合的な提案力が同社の大きな特徴と言えるでしょう。

国内オフィス家具市場においては、長年にわたりトップクラスのシェアを維持しており、そのブランド力と品質は高く評価されています。世界市場においても有力なプレイヤーの一角を占めており、国内外で強い存在感を示しています。

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競合他社との比較では、高品質な製品ラインナップに加え、全国を網羅する販売・サービス網、そして「人を想い、場を創る」という理念に基づいた空間提案力が競争優位性の源泉となっています。

オカムラの製品は、エルゴノミクス(人間工学)に基づいた設計と、洗練されたデザイン性が特徴です。特に、高機能オフィスチェアの「Contessa」や「Sylphy」などは、その代表例として国内外で広く知られ、高い人気を誇ります。

これらの製品は利用者の快適性と生産性向上を追求しており、オフィスだけでなく、教育、工場など多様な「場」に最適なソリューションを提供しています。

オフィス家具市場は、働き方の多様化やテクノロジーの進化に伴い、常に変化しています。オカムラは、その変化に対応するための総合力、研究開発力、デザイン力を有している企業の一つです。これらの強みを活かし、変化する市場環境への対応を目指しています。

空間ソリューションで働き方を革新「コクヨ」

1905年創業のコクヨ株式会社は、日本のオフィス家具業界をリードする存在です。

国内オフィス家具市場において、競合のオカムラと並びトップクラスのシェアを有し、業界の動向を左右する影響力を持っています。また世界市場に目を向けても、有力なプレイヤーのひとつだと言えます。

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同社の競争優位性は、単に製品を供給するだけでなく、顧客の課題解決に深くコミットするコンサルティング型の営業スタイルにあります。「モノからコトへ」という方針を掲げ、顧客の働きがいや生産性向上に貢献する空間価値の提供を追求している点が特徴です。

コクヨの提供価値は、個々の家具の機能性やデザイン性に加え、オフィス空間全体を最適化する提案力にあります。顧客のニーズを的確に把握し、最新のトレンドや人間工学に基づいた快適で効率的なワークプレイスを具現化します。この空間創造能力は、多様化する働き方への対応が求められる現代において、ますます重要性を増していると言えるでしょう。

ハイブリッドワークの普及など、オフィス環境が大きく変化する中で、コクヨは空間ソリューションプロバイダーとしての役割を強化しています。M&Aなども活用しながら事業基盤を拡充し、変化に柔軟に対応するための取り組みを進めています。

次世代の働き方をデザインする「イトーキ」

株式会社イトーキは、1950年の設立(実質)以来、日本のオフィス家具業界において重要な地位を占めてきました。

主力である「ワークプレイス事業」を通じて、オフィス家具や在宅ワーク用家具の提供はもちろん、企業の働き方戦略立案から環境構築に至るまでのコンサルティングやデータサービスも展開。「働く」を基軸に、多様化する現代のワークスタイルに対応したソリューションを提供することが同社の核となっています。

国内オフィス家具市場においては、オカムラ、コクヨに次ぐ主要プレイヤーの一角として確固たる地位を築いています。イトーキの強みは、確立されたブランド力に加え、ポストコロナ時代の働き方の変化にいち早く着目し、「集合して働く」オフィス環境と「分散して働く」在宅環境の両方を支援する製品・サービスを統合的に提供できる点にあるでしょう。

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また同社は家具販売だけでなく、顧客企業の課題解決を目指すトータルソリューションを提供しています。働き方に関するサーベイやデータ分析に基づいたコンサルティングを行い、最適なワークプレイスの実現を支援します。

オフィス環境が継続的に変化していく中で、イトーキはワークプレイス全体への深い知見と、変化に対応する柔軟なソリューション提供能力を活かして事業を展開しています。また、イノベーションやESG(環境・社会・ガバナンス)へも積極的に取り組んでいます。

ICTで進化するワークプレイス「内田洋行」

株式会社内田洋行は、長年にわたり日本のオフィス環境構築を支えてきた企業です。オフィス環境構築事業を主要な柱の一つとし、機能性やデザイン性に優れた高品質なオフィス家具を提供することで、快適で効率的なワークスペースの実現に貢献しています。同社は国内オフィス家具市場においても主要プレイヤーの一角を占めています。

内田洋行の大きな特徴は、単に高品質なオフィス家具を提供するだけでなく、そこに先進的なICT(情報通信技術)ソリューションを「付加価値」として組み込める点にあります。家具とテクノロジーの融合こそが、同社の独自の強みと言えるでしょう。

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具体的には、Web会議に最適化された音響・映像設備を内蔵した集中ブース、社内スペースの利用状況を可視化するオープンスペースの管理システムなどが挙げられます。

これらの「スマートファニチャー」は、ネットワークインフラやセキュリティ、コラボレーションツールといったICT基盤と連携し、オフィス全体の生産性向上やコミュニケーション活性化を実現します。

働き方の多様化やデジタルトランスフォーメーション(DX)が進む現代において、オフィス家具にも単なる快適性やデザイン性だけでなく、テクノロジーとの連携による新たな機能性が求められています。

内田洋行は、オフィス家具に関する深い知見と、ICTソリューション開発・導入における技術力、さらには教育分野で培ったノウハウを併せ持ち、これらを活かして先進的なオフィス環境の提案を行っています。