【円高メリット銘柄10選】今こそ注目!輸入コスト減で業績アップが期待される株

良品計画

最近の為替市場では、円高が進む局面が見られます。この円高は、輸出企業の海外での価格競争力を弱めるため、一般的に逆風とされます。

しかし一方で、輸入コストの低下という恩恵を享受できる企業も存在します。 特に、電力・ガス、小売、食品といった内需型セクターなどです。

これらの企業は原材料や商品を海外から安価に調達でき、業績向上が期待されます。 そのため「円高メリット銘柄」として、投資家の関心が高まる傾向にあります。
市場全体が不安定な局面でも、こうした銘柄は相対的に注目されやすいでしょう。 この状況は、新たな投資機会とも捉えられます。

円高メリットを享受しやすい具体的な注目銘柄10選

では、円高メリットを享受しやすい具体的な企業を見ていきましょう。

製品や原材料の輸入比率が高い企業がまず候補となります。小売では家具のニトリ、生活雑貨の良品計画などが代表的です。
また、燃料輸入の負担が大きい電力・ガス、航空会社も恩恵を受けやすいでしょう。加えて、食材輸入に頼る食品メーカーや外食チェーンにも注目したいところです。

ニトリホールディングス (9843)

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家具・インテリア小売最大手のニトリHDは、「お、ねだん以上。」で知られる製品の多くを海外から輸入する企業です。
同社IR情報が示す通り海外生産比率が高く、円高は原価低減に直結しやすい構造です。為替感応度も高く、円高が利益を押し上げる要因となります。
※影響の大きさは時期や前提により変動する点に留意が必要です。

このメリットを活かす上で鍵となるのが、独自のSPA(製造小売)モデルです。企画から製造、物流、販売まで一貫してコントロールしコストを最適化するこの仕組みは、こちらの記事でも解説されています。

円高によるコスト削減分は、単に利益率改善に繋がるだけではありません。更なる低価格戦略や販促強化の原資となり、シェア拡大も後押しします。このように競争環境に応じた柔軟な戦略を採れる点も同社の特徴です。

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東京電力ホールディングス (9501) / 関西電力 (9503) など電力大手

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東京電力HDや関西電力といった大手電力会社は、発電燃料、特に液化天然ガス(LNG)や石炭の多くを輸入に頼っています。燃料の国際取引は主にドル建てのため、円高は燃料調達コスト(円建て)を引き下げます。

各社の決算資料などで示される為替感応度は高く、注目点のひとつです。例えば1円の円高が数十億円規模で営業利益に影響を与えるという試算もあります。
※ただし影響は燃料構成や調達契約により各社で異なります。

しかし、電力会社特有の「燃料費調整制度」の存在が重要です。これは燃料費の変動を、時間差を伴って電気料金に反映させる仕組みです。
そのため円高によるコスト削減メリットは、すぐには全額が会社の利益にならず、時間をおいて利用者に還元される側面が強い点に留意が必要です。

日本航空 (JAL: 9201) / ANAホールディングス (9202) など航空大手

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日本航空(JAL)やANA HDなど大手航空会社についても、円高の恩恵を受ける企業と言えます。

各社のIR情報によると、営業費用に占める燃料費の割合は大きいです。航空燃料は国際価格に連動し、決済は主にドル建てで行われます。そのため円高は、燃料の円建てコストを直接引き下げ、利益押し上げ要因となります。

また、為替感応度は高く影響額も開示されます。特に国内線事業では円高メリットが現れやすい構造です。

一方、国際線事業では外貨建て収益の円換算額が減少するというデメリットもあります。燃料価格や為替の変動リスクにはヘッジ取引で備えているのが一般的です。そのため、業績へのメリット反映には時間差が生じる点に留意する必要があります。

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サイゼリヤ (7581)

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低価格イタリアンレストランとして知られるサイゼリヤ。その価格競争力の源泉の一つは、製造から販売までを一貫して手がける独自のビジネスモデルにあります。

同社のIR資料によると、豪州の子会社でグループ向けの食材を製造するなど、国内外の自社工場での生産・加工を推進しています 。 また、プライベートブランド商品の多くを海外から輸入しており 、グローバルな調達網を構築しています。

このビジネスモデルにおいては、輸入される原材料や商品のコストが為替変動の影響を受けます。一般的に、円高はこれらの仕入れコスト(円建て)を引き下げる要因となり得ます。
同社は為替ヘッジも活用しつつ 、品質を維持しながら低価格を追求する方針を支えています。自社工場での製造・加工推進も、コスト管理と品質維持に貢献する重要な要素です 。

円高によるコスト削減の可能性は、同社の生命線である低価格戦略の維持に貢献し得ます。同時に、利益率の確保や改善にも繋がる可能性を秘めています。

もちろん、天候不順による不作など、為替以外の要因による原料価格変動リスクも別途存在します。

良品計画 (7453)

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「無印良品(MUJI)」ブランドを展開する良品計画について見ていきましょう。衣料品や生活雑貨、食品等を国内外で幅広く販売する企業です。

IR情報によれば、商品の多くを海外(特にアジア地域)で生産しています。そして日本国内市場向けに輸入する製品が多いビジネスモデルとなっています。

そのため円高は、国内事業における仕入れコスト(円建て)の抑制に繋がり、これは国内の利益率改善に寄与する可能性がある要素です。

一方で、海外事業の比率が高いことも同社の重要な特徴と言えます。海外で得た利益は、円高局面では円換算時に目減りしてしまいます。

したがって良品計画への円高の影響は、国内でのコスト削減メリットと、海外利益の円換算額減少とのバランスを考慮した総合的な評価が不可欠です。どちらの影響が大きいかは、国内外の事業構成比や為替レートの水準によって変動します。

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ABCマート (2670)

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靴専門店チェーン大手のABCマート。プライベートブランド(PB)商品と並行し、海外の有名ナショナルブランド(NB)の靴も多数輸入・販売しています。

IR情報によるとNB商品を含むスポーツカテゴリが売上構成で重要な位置を占めます。これらの仕入れは主に外貨建てのため、円高はコスト低減に繋がります。このコスト削減は粗利益率を改善させ、営業利益を押し上げる可能性があります。

NBの正規販売とPB強化の両立が、同社の高い収益性を支える基盤です。為替変動は輸入品コスト経由で、この収益性に影響を与える要因となります。また一部NBでの独占販売権も強みで、価格競争を緩和する効果があります。

これらの要因により、円高メリットを利益として確保しやすい構造とも言えるでしょう。

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ニッスイ (1332)

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水産最大手のニッスイ(旧:日本水産)について見ていきましょう。漁業から養殖、食品加工までグローバルに事業を展開しています。

IR情報によると、海外からサケ・エビ等の水産資源を多く輸入しており、これが原材料コストの大きな部分を占める事業構造です。 そのため円高局面では、これら輸入コストの円建て価格が低下し、コスト抑制を通じて、水産・食品事業の利益率改善に繋がる可能性があります。

ただし、水産物の価格自体が漁獲量や需給バランスなど市況要因で大きく変動します。この市況リスクは常に考慮すべき点として、IR資料等でも指摘されます。

一方でニッスイは海外での生産・販売や輸出も活発に行っています。そのため円高は、海外子会社の利益や輸出売上の円換算額を減らす側面も持ちます。

円高によるネットでの影響は、この両面での総合的な評価が必要です。加えて、先に触れた水産資源価格そのものの変動も注視すべき要因です。

王子ホールディングス (3861) / 日本製紙 (3863) など製紙大手

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王子ホールディングスや日本製紙といった日本の大手製紙会社は、紙の主原料となる木材チップやパルプの多くを海外からの輸入に依存しています。国内資源だけでは生産を賄いきれず、世界各地から調達しているためです。

これらの原料輸入は主に外貨建て決済のため、円高は原料コスト(円建て)を抑制します。 原料コストは製造原価の大きな部分を占めるため、円高は収益改善要因です。また、製紙業はエネルギー多消費型産業として、輸入燃料費も円高で低下し得ます。

一方で製紙業界は、ペーパーレス化による構造的な需要減に直面しています。これは各種分析で指摘される通り、コスト削減が収益維持の鍵となります。

こうした厳しい事業環境下において、円高によるコストメリットは、企業の収益を下支えする重要な要素となり得るでしょう。 ただし、原料調達は長期契約の場合もあり、コストへの反映に時間差が生じるケースがある点には留意が必要です。

東京ガス (9531) / 大阪ガス (9532) など都市ガス大手

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東京ガスや大阪ガスなどの大手都市ガス会社は、その主原料である液化天然ガス(LNG)のほぼ全量を海外からの輸入に依存しています。これは、国内には利用可能な天然ガス資源が乏しいためです。

LNG調達契約は多くがドル建てのため、円高はコストを引き下げる要因です。原料費はコスト構造の中心であり、円高は理論的には増益に繋がります。

しかし都市ガス業界にも「原料費調整制度」があり、この影響を調整する仕組みとなっています。原料価格の変動を時間差を伴ってガス料金に反映させるため、円高によるコストメリットは最終的に利用者に還元される側面が強いのです。
※ただし調整期間中は、一時的な利ざや改善に繋がる可能性もあります。

また近年は、電力小売事業への参入など事業の多角化も進展しています。これにより会社全体の為替感応度は、従来とは変化しつつある点も注目です。

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日清製粉グループ本社 (2002)

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製粉国内大手の日清製粉グループ本社。同社IR情報によると、日本で消費されている小麦粉の原料の9割は輸入小麦となっています。国内自給率の低さから、主に米国・カナダ・オーストラリア等からの輸入が中心です。

輸入小麦価格は為替の影響を受け、円高は調達コスト減に繋がる可能性があります。
原料コストは収益性を左右する重要要素であり、円高によるコスト削減は、理論上は利益改善要因となり得ます。

ただし、日本の輸入小麦には政府による売渡価格制度が関与しています。これは政府が小麦を輸入し、定期的に改定される価格で製粉会社へ売り渡す仕組みです。

そのため、国際市場価格や為替レートの変動が、即時・直接的にコストに反映される訳ではなく、円高メリットを享受できる時期やその度合いは、この制度の影響を受けます。 加えて、最終製品の顧客への価格転嫁状況も、最終的な利益を左右する点は留意が必要です。

円高局面で有利なのは?注目すべきセクター解説

円高局面で、特に恩恵を受けやすいと考えられるセクターを整理します。これらの多くは、事業における輸入依存度の高さが共通点と言えるでしょう。

・小売業: 海外製品やブランド品、海外生産品を輸入する企業は、仕入れコスト低減の恩恵を受けやすい。
・電力・ガス: 主原料のLNGや石炭などの輸入燃料コストが下がる。
・航空会社: ドル建て決済が多い燃料費の削減メリットが期待できる。
・食品関連: 輸入食材・原料に頼る企業のコストが低減する。
・製紙・パルプ: 輸入チップ等の原料コスト改善が見込まれる。

これらのセクターが円高メリットを享受できる度合いは、売上原価や費用全体に占める輸入品・外貨建てコストの割合に大きく左右されます。
輸入比率が高ければ高いほど、円高によるコスト削減効果は大きくなります。

また、これらの企業の多くは国内需要に依存する側面が強いため、円高と同時に国内景気が大きく悪化するような場合には、コスト削減メリットが販売不振によって相殺されてしまう可能性も念頭に置く必要があります。

円高メリット銘柄の見つけ方:選定基準と着眼点

円高メリットが期待される銘柄を自身で見つけ出すためには、いくつかの選定基準と着眼点があります。以下に主要なポイントを挙げます。

まず注目すべきは、企業のコスト構造において、輸入品や輸入原材料、あるいは外貨建ての費用が占める割合が高いかどうかです。決算短信、有価証券報告書、決算説明会資料などで、コスト構造を詳細に確認することが有効でしょう。海外からの直接調達が多い事業構造かどうかもポイントになります。

また、バランスシート(貸借対照表)で外貨建ての負債が過大でないかの確認も必要です。多額の外貨建て負債があると、円高で負債の円換算額が増え、本業でのメリットを相殺しかねません。

少し意外な視点ですが、製品・サービスへの価格転嫁が難しい企業が、結果的に円高の恩恵を受けやすい場合もあります。コスト削減分が値下げ圧力に繋がりにくく、利益率の改善に直結しやすいためと考えられます。

企業の「為替ヘッジ方針」は、円高メリットが実際に損益に反映される時期や度合いを見極める上で重要です。企業が開示している「為替感応度分析」(為替レートの変動が損益に与える影響額の試算)も、メリットの大きさを測る上で有用な情報源となります。

これらの定量的・定性的な要素を基に、個別企業を詳細に分析することが、有望な円高メリット銘柄を発掘するための鍵と言えます。

円高を追い風に賢く投資機会を捉える

本記事では、円高メリット銘柄について解説しました。円高のメリットを受けやすいのは、主に海外からの輸入コストが低下することで恩恵を受ける小売、エネルギー、航空、食品、製紙といったセクターの企業群です。

これらの銘柄への投資を検討する際には、単に「円高だから」という理由だけでなく、より踏み込んだ個別企業の分析が不可欠となります。
確認すべきポイントとして、輸入比率やコスト構造、為替感応度、外貨建て負債の状況、価格戦略、為替ヘッジ方針などを精査しましょう。
企業の本来の競争力や成長性、財務健全性といったファンダメンタルズに関する多角的な視点も重要です。

為替相場の動向は不確実性が高く、常に変動する点を忘れてはいけません。円高が進行する背景にある経済状況によっては、コスト削減メリットが需要減で相殺されるリスクも考慮する必要があります。

本記事を参考に市場動向や個別企業情報を注視しつつ、ご自身の投資方針とリスク許容度に基づき、賢明な投資検討を進めて頂ければ幸いです。